上場企業という形態は、長い間、
資金調達・成長・信用の中核を担ってきた。
株式を発行し、不特定多数から資金を集め、
企業価値を市場で評価してもらう仕組みである。
ここで観測するのは、
上場が良いか悪いかではない。
上場企業が成立してきた前提条件が、今も維持されているかという点である。
上場構造の前提には、
・成長が継続する
・情報は段階的に開示される
・市場が企業の将来を評価する
という考え方がある。
この前提では、
株価は未来への期待を数値化する装置として機能する。
現在、その前提が揺れている。
情報は即時に拡散し、
事業環境は短期間で変化し、
未来の見通しは不確実性を増している。
この状況では、
長期的な計画よりも、
短期的な説明責任が強く求められる。
企業は、事業の成果だけでなく、
市場の納得を継続的に維持する必要がある。
その結果、
株価は事業価値の反映というより、
説明と期待の管理指標として振る舞い始める。
ここで起きているのは、
株という仕組みの消滅ではない。
株が担っている役割の重心が移動しているという現象である。
上場は、
自由度を高める装置であると同時に、
判断を市場に預け続ける構造でもある。
未来において成立するかどうかは、
上場企業が残るか消えるかでは測れない。
観測できるのは、
すべての企業が上場を必要とする前提が弱まっているという点である。
株は、
企業の未来を決めるものではなく、
その時点で共有されている前提を映す鏡として存在している。