かつては「誰もが持っていて当たり前」だった銀行口座。
しかし、今この国では“銀行口座を持てない”人々が、静かに、しかし確実に増えている。
その背景には、「自己責任社会」の名のもとに進む、本人確認の厳格化、住居の不安定化、そして“信用”の再定義といった、見過ごせない社会構造の変化がある。
お金を持っていても、銀行にアクセスできない。
それは単なる“貧困”の話ではなく、あなたや、あなたの大切な人が、いつこのレールから外れるかわからない、そんな時代の“兆し”だ。
この記事では、「金融排除(ファイナンシャル・エクスクルージョン)」の視点から、
この不可視の分断と、迫りくる“信用格差社会”の実態を読み解いていく。
なぜ“銀行口座を持てない人”が増えているのか?
かつては「銀行口座を持っていない人」といえば、ごく一部の“特殊なケース”の人たちだと考えられていました。たとえば、ホームレス状態の人、反社会的勢力に属する人、あるいは犯罪歴のある人──そんな偏見もあったかもしれません。
しかし、いまは「まじめに働いている普通の人」でも、口座を持てなくなるケースが現実に増えてきています。
たとえばこんな人たちです:
-
転職が続いて住所が安定しない人
-
離婚して実家にもどったばかりのシングルマザー
-
フリーランスで確定申告しているが、収入が毎月変動する人
-
一時的に住民票を移していない人
-
「クレカブラック」状態になった若者
これらは、いずれも “本人確認書類”の不備や、“信用スコアの不在”などが原因で、銀行口座の開設が難しくなるパターンです。
特に問題となるのは、口座開設時に以下のようなものが求められることです:
-
本人確認書類(免許証・マイナンバーカードなど)
-
住民票や公共料金の支払い明細(住所証明)
-
安定した収入や雇用契約(職業証明)
これらが「揃っていない」「提出できない」だけで、現代社会のあらゆる経済活動から排除されてしまうのです。
たとえば、コンビニバイトを始めるために口座が必要。でも口座を作るために“職業証明”が必要。これはまさに詰んでしまう構造です。
そして皮肉なことに、この状況はこれからさらに拡大していくと考えられます。なぜなら:
-
銀行側の審査がAI化・自動化され、柔軟な対応がなくなる
-
マネーロンダリング対策が強化されるほど、形式的な審査が厳格化される
-
実店舗が減り、オンラインでの申込手続きしか残らなくなる(スマホが必須)
つまり、「証明できない人」が社会からはじき出される時代に、すでに突入しているのです。

